ホームレスの振る舞いは「移民」のそれ(美術手帖『「移民」の美術』より)The behavior of the homeless is that of “immigrants”. -“Immigration” art, Bijutsutecho, –

In Japan, immigrants, refugees, manual workers and illegal immigrants are considered the same. As a subcontractor for immigrants, I started a project to make products using industrial sewing machines.

移民と難民と肉体労働者と不法滞在者をごっちゃにして、その眼差しを外国人に向けがちな状況下で、移民の下請け労働者として、工業用ミシンを使って製品を作るプロジェクトを始めました。

Title: ホームレスの振る舞いは「移民」のそれ(美術手帖『「移民」の美術』より)
Year: 2020
Size: A5size book cover
Material/medium: Embroidery on Lather

一般的に移民とは一年以上日本に暮らす外国人や永住権を持つ外国籍の人々を指します。
In general, immigrants are foreigners who have lived in Japan for more than a year or foreign nationals who have permanent residency.

美術手帖2019年12月号(2020年1月発売)の特集『「移民」の美術』巻頭の移民のフォトレポートでは、移民の実態が「難民または出稼ぎ外国人の肉体労働者」であるかのような誘導がされています。その証拠に、この特集にホワイトカラーや白人は入っていません。そして日本人のホームレスを「移民」として特集しています。さらに美術手帖編集部は、ホームレスを日本人から外そう!と宣言しているのです(びっくり)。

美術手帖は1948年創刊から現代美術に特化した雑誌で、メジャー誌としての発行部数は少ないながらもアート業界では他に匹敵する発行部数の雑誌がなく、批評から若手アーティストの特集までする、日本の美術業界では強い影響力を持った雑誌です。

「私たちの気づきのために」と題された美術手帖の巻頭特集にはこう書かれています。

日本人であり日本で暮らす彼女(ホームレス)は、 いわゆる「移民」ではない。しかし、 移動しながら制度のグレーゾーンを 「すり抜けて」いく振る舞いは、 都市を渡り歩くための技術を身に付けた、繊細で力強い「移民」のそれのようにも思える。

美術手帖2019年12月号『「移民」の美術』より

ぼかした指示語が多いので、カッコ()書きは私が入れました。日本語特有のぼやかした書き方をあけすけに書き直すと「ホームレスの違法性を匂わす行動は移民みたいだよね(移民ってもちろん全員違法すれすれだよね?)。

思わせぶりに書いている”「移民」のそれ”の、”それ”とはなにか?”それ”については、この文章の最後に書きますので、ひとまず文章を読み進めましょう。

移民は近くにいる。普段なら「ない」 ものとして見過ごされる彼ら (移民) の 言動や身振りを注意深く見てみる。 そこには、身体的実感を伴う、私たちの社会をうつした、新しい「移民」(ホームレス)の姿を発見できるはずだ。

美術手帖2019年12月号『「移民」の美術』より

警告文のような”移民は近くにいる。”という断定した言葉。「気をつけろ、移民は近くにいる。移民を注視すればホームレスとの今どきな類似性が発見できるぞ」といった具合でしょうか。雑。分類が雑すぎる!!!今の日本で外国籍の居住者を見たことない人なんているのかな?それより何より圧倒的な見下し目線の文章。

この記事の一番の問題点は誰の視点から書かれているのかだと思います。”新しい「移民」”(ホームレス)の姿を発見したいのは誰なのか?一体誰が、移民を”ない”と見過ごしているのか?誰が移民やホームレスたちのプライバシーもそこそこに、注意深く観察(監視?)するのか?に尽きると思います。この疑問は、タイトルの「私たちの気づきのために」がすでに答えてくれています。移民は誰の観察対象かといえば、(日本由来の)わ・た・し・た・ち。

先の文章で問題提起した”「移民」のそれ”の”それ”とは「(日本由来の)私たち」が気づきたい”何か”です。哲学や心理学では「気づき」とは意識を向けることを指します。そしてスピリチュアルや精神世界では「気づき」は真の世界を開いてくれるものとして尊ばれています。

「移民」のそれ(私たちが気づきたいなにか)”、とは平たく言うと、”違法の空気”です。法を厳守している安全な「(日本由来でなおかつ生活基盤の安定している)私たち」からみると外国籍やホームレスは法に抵触してそ~だから、ここはひとつホームレスは日本人じゃないってことで、「(日本由来でなおかつ生活基盤の安定している)私たち」でちょっとその刺激を覗いてみようよ!というのがこの文章の言いたいところでしょうか。ひどい。ホームレスは非国民なのか。移民とホームレスを温かい目線で見守っている記事ですよとか反論されそうですが、その目線は上から目線でしかありません。

移民とホームレスは「(日本由来でなおかつ生活基盤の安定している)私たちの気づきのために」存在しているのです。

くそ!!誰かをあげつらって楽しむ記事なんて90年代のQJみたい!と怒り口調で書くと(違法すれすれと決めつけられている移民の)私は怒られ(シカトされ)そうなので、永遠に我慢を強いられつつ丁寧な口調で作品づくりに勤しむしかなく、言われた通りの肉体労働者として、美術手帖のブックカバーをレザーに刺繍仕上げで作りました。形容詞や副詞は刺繍糸を黄色にして、文書を読みやすくしています。発注してくだされば、労働者として一つだけでも量産でも作ります。

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